蔵出しエッセイ⑥

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<手元にある1本のルアー>

 手元に1本の、ボロボロになったルアーがある。

『ショアラインシャイナーR50LD』

 ご存じ『ショアラインシャイナーR50』のロングディスタンスモデルだ。

 ホロは、ほぼ全て剥がれ落ち、元のカラーは跡かたもない。

 言うなれば、クリアーボディのフローティングミノー。

 しかし、なぜかどうしてか、このルアーは最後まで釣れ続けた。

 主だった釣果は、ヒラスズキとイナダ。

 合わせて20尾以上は釣り上げただろう。

 当然、ヒット数はそれ以上。

 最後は、「んっ、動きが変だ」と気づき、その原因が水漏れと判明。水漏れの原因は、ボディにヒビが入ってしまったため。

 何せよく働いてくれた。過酷な使用に耐え続けてくれた。よって、ひび割れは仕方ないことと諦めがつく。「ご苦労さん」と言ってやりたい。

 似たようなケースは、しばしばある。

 塗装の剥げたメタルジグがなぜかどうしてか釣れ続けるケース。

 元の色はおろか、鉛が剥き出しになってしまった状態でも延々釣れ続くことがよくある。

「ルアーのカラーって本当に意味があるのか」と悩んでしまうのはそんな時だ。

 あるいは、アオリイカにかじられ歯型でボロボロになってしまったエギが、やはり釣れ続けることも珍しくない。

 バランスは? カラーは? と心配になるが、なぜかどうしてか釣れ続く。

 おそらく、ボディ(ルアー)そのもののバランスがよいのだろう。

 そんなことを考えているうち、前述の『ショアラインシャイナーR50LD』が特別よく釣れるルアーにおもえてきた。

 即、リペアー。

 ドリルで小さな穴を2カ所開けて内部に入り込んだ水を完全に抜く。

 穴にジェルタイプの瞬間接着剤を流し込み、開けた穴をふさぐ。

 ひび割れた箇所に、液状タイプの瞬間接着剤をたっぷり流し込み、補修する。

 カラーは、あえて何もせず、そのまま使ってみる。

 心配なのは、でっかい魚が掛かった際に、再びボディが割れ、せっかくの大物に逃げられたりしないか。

 ともあれ、こうして廃棄寸前のルアーが、ルアーボックスの中に後戻りしたのである。

 

(初出:2010年10月)

 

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